小津安二郎監督と東哉



小津安二郎監督は黒澤明監督と並び世界的に評価される日本映画の巨匠として知られています。
小津監督の映画はドラマチックなストーリー展開があるわけでもなく、一見淡々とした日常が描かれているにすぎないのにそこから日本人の生活と人生の滋味が滲み出てきて、みるものを懐かしい気持ちにさせます。
どの作品もカットのひとつひとつが美しく、何度でもみたくなる中毒性があると言われています。

小津監督の映画の美しさを支えた小津組のなかで「巧芸考選」というスタッフが東哉の先代当主 山田隼生であり、山田は小津監督の要望に応え、大道具でもなく小道具でもなく、芸術、工芸など日本文化のアドバイスに務めました。
お茶に関する事や床の間の花器など、小津監督独自のカメラアングルの低さからみたテーブル上の器の置き方なども示唆しました。
何物でも本物にこだわる小津監督は、ちょっと端しか映らないものでも偽物を嫌い常に本物を用意させたそうです。

小津監督の初めてのオールカラー作品である「彼岸花」をはじめ4〜5作品のお手伝いをさせて頂きましたが、そこに東哉の器が使われたのは言うまでもありません。
現在も実際に映画に使われたものと同じ花器や湯呑等を造り続けています。
また東京銀座の東哉本店は、小津監督がスタッフとよく銀座を遊興した時の集合場所で、店の奥の座敷でテレビを見たりして皆が集まるのを待ってそれから呑みに出かけられたそうです。
現在は東哉ビルとなって当時の面影はありませんが、東哉の造る品物のなかには小津監督に求められた一流の感性が今も生き続けています。
京都売舗では映画に使われていた竹製の電気傘や釣り灯籠など、山田が選んで用意した物が残り今も使われています。


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